不登校と向き合って ~前に進んでいくための5段階~

教育
にほんブログ村 教育ブログ 高校教育へ 人気ブログランキング
人気ブログランキング

私は高校教員として35年間働くなかで、何人もの「学校に来られない」生徒と向き合ってきました。

その経験から、本ブログの前記事 「不登校と向き合って ~『学校をやめたい…』そのとき教師は」 では、

先生方向けに

  • 最近の「学校をやめたい生徒」への学校対応の傾向 → 学級担任まかせになりがち
  • 全日制・定時制と通信制課程の違い → 通信制の方が楽とは言えない
  • 教師はいったん立ち止まらせて「悩む」ことの大切さを伝える → 焦って進路変更することはない

                                 など、お話しさせていただきました。

では、立ち止まっている間、当事者である生徒のみなさんはどうすればいいのか。。。

今回は、そんな子どもたちの「前に進んでいくための5段階」について、私が学年主任のころに担当した生徒を例にお話ししたいと思います。

 

第1段階 自ら「学校に行かない」ことを選ぶこと

最初に伝えたいのは、

「学校に行かない」という選択は、“前に進む”ための大切な宣言だということです。

エピソード

その生徒は、高校2年生の時、不慮の事故で2週間入院したことをきっかけに、徐々に学校に来ない日が増えていきました。

そして、3年生の新学期、2週間ほどが過ぎて、ついに登校が途絶えてしまいました。

しばらく様子を見ていましたが、「これから1ヶ月休んだらどうかな。どうするかは、あなたが決めてね。」と面談で提案しました。

一言「はい」と答えただけでしたが、ホッとした表情になったように感じたことを覚えています。

「学校に行けない」生徒は、毎日のように不安な気持ちとたたかっています。

しかし、「行けない」を「行かない」に変え、それを自分の選択として認めてもらえた感覚は、自己を肯定することの第一歩としての大きな意味を持つことでしょう。

 

第2段階 いまの自分を見つめ直すこと

 「学校に行かない」期間は、いわば “心の整理整頓” の時間です。

心に余裕をもって、頭に浮かんだときだけでいいから、今の自分を見つめ直してみましょう。

エピソード(つづき)

私は学年主任でしたから、学年会で学年の先生方と情報共有を図り、担任の先生には、保護者への毎日の電話またはショートメールでの連絡をお願いして、ときには、私自身も本人と直接話しをしました。

「今日は、何をして過ごしたの?」というような、本当にたわいもない会話です。もちろん、学習課題については、保護者を通じて伝えていましたが、この頃はそのことにはあえて触れないようにしていました。

「学校に行かない」ことにする以前の罪悪感と不安の世界から解放されてはじめて、自分を冷静に見つめ直し、自分の気持ちを知ることができます。
大事なのは、あせって正解を出そうとしないこと。

思ったこと、感じたことを否定せず、自分の気持ちに正直に、そのまま受け止めてみましょう

第3段階 将来の自分を想像すること

心の整理ができると、スッキリとしてきて、自然に元気がわいてきませんか。
もしそうなら、何となくでいいから、「なりたい自分」を想像してみてください。

たとえば──
・人と関わる仕事がしたい
・一人でもできる仕事がいいな
・自然の中で暮らしてみたい
・本をたくさん読みたい
・絵を描いて暮らしたい

エピソード(つづき)

約束の1ヶ月がおわり、体育祭も近づいてきたので、それをきっかけに登校できないかと思って誘ってみると、登校するとの返事が返ってきました。

断続的ながら登校は再開したので、担任に改めて卒業後の進路について聞く機会をつくってもらいました。

もともと大学進学を希望していたのですが、無理だと考えているようだとの報告でした。

ここで大事なことは、現実的かどうかは、ひとまず置いておくこと
“こんな自分だったらいいな”と思える未来を、自由に思い描いてみてください。

第4段階 将来の自分を認めること

エピソード(つづき)

体育祭が終わると、再び欠席する日が多くなりました。そして、その状態は2学期に入っても続き、中間テストが終わるとパタリと来なくなってしまったのです。

このままでは卒業できない。欠席日数が規程を超えるのも時間の問題でした。

そこで、学年団として校長先生にかけあい、職員会議で諮り、朝あるいは放課後だけなど、どの時間でも本人が登校すれば出席とするという特例を認めてもらえることになりました。

大げさかもしれませんが、人生は80年以上あります。高校生活は、その中のわずか3年です。

今の自分に自信がなくて、「自分にはもう無理だ」と決めつけていませんか?
でも、「いつかはきっと…」と思えば、実現できるのではないでしょうか。

少しずつでいいから、「それもアリかもしれない」と思ってみてください。

将来の自分を認めることは、「こうなりたい自分にな」と、これからの自分に目標を課すことです。

第5段階 将来の自分に向かって行動すること

最後の段階は、“行動”です。
でも、「学校に戻る」とか「すぐに進路を決める」といった大きなことじゃなくてかまいません。

朝、少しだけ早く起きてみる
・散歩に出てみる
・家族に気持ちを話してみる
・パソコンで興味ある分野を調べてみる

小さな行動で十分です。
大事なのは、“自分の意志でやった”ということ。
それが、前に進むということです。

エピソード(つづき)

それからは、ほぼ毎日、両親に交代で朝や夕方に送ってもらいながら、課題を提出してくれました。

提出された課題は、ノート1ページだけという日もありましたが、その努力の甲斐あって、

2月に卒業が認められました。しかし、卒業後の進路は、まだ考えられる状況にはありませんでした。

おわりに 今のあなたの場所がスタート地点

ここまで読んでくれたあなたは、もう「変わろう」と思っている人です。
たとえそれが、今は何もできない状態だったとしても、あなたの心はちゃんと動いています

エピソード(ラスト)

卒業式の日。

出席するという連絡はあったのに、なかなか現れません。

開式まであと15分になっても、まだ来ません。

学年主任の私は、これ以上待てないので式場の体育館へ入り着席。

そして、緊張と静寂の中…

「卒業生入場!」のアナウンス

卒業生入場の演奏が始まりました。

そして、いよいよ3年2組の入場です。

祈る思いで入場を見守ると…

いた!

それだけで、涙があふれてきました。

その生徒は、卒業の翌年に美術系の専門学校に入学しました。

その知らせを聞いたとき、心から「よかった」と思いました。

不登校だった生徒たちは、時間はかかっても、ちゃんと自分の道を見つけていきました。
あなたも、きっと大丈夫。
焦らなくていい。
自分のペースで、5つの段階を 少しずつ進んでいってください。

あなたの人生は、あなた自身が決めるのですから。

PVアクセスランキング にほんブログ村


コメント

タイトルとURLをコピーしました